活動報告
 随想:スカンジナビアの人々の安全観
 

8月末から9月11日まで、海外出張で欧州を回ってきました。

世界保健機構(WHO)の取り組んでいる交通安全対策、とりわけ事故予防戦略の調査研究のためですが、北欧では朝の気温が既に6度まで下がっており、太陽も日本の冬日に近い弱々しい日差しでした。

スウェーデンでは自転車道が整備され、80歳を越えたとおもわれるお年寄りが、ファッショナブルな格好いいデザインのヘルメットをかぶって、颯爽と自転車を楽しむ様子は、何とも微笑ましいかぎりでした。こどものヘルメット着用が義務づけられているとか。日本でも安全器具がいろいろ出されていますが、思わず身に付けたくなるようなデザインをまず考えるべきでしょう。

人口比の交通死亡事故率が世界1少ない国として、この国のビジョンゼロ交通安全戦略は有名ですが、その根底には、文明の利器の自動車は、そもそも誰のためにあるのか?という素朴な現代文明への反省から始まってることは、余り知られていないようです。人間の尊厳、安全に生きることの権利は誰からも、何ものからも犯されてはならないという、安全哲学の上にたっているのです。

スウェーデンは、野生動物保護のために、大鹿とぶつかった車の運転手は、鹿の怪我の状態や逃げた方向を環境省に届けなくてはいけないというお国柄であもあります。ひとに優しい国では、動物にもやさしいのです。

ノルウェーは初めての訪問で、ハルシュタットという北極圏の町と首都オスローを見てきました。真冬には2ヶ月間、太陽が全く見えない世界となる由で、オスローにおいても人々は老いも若きも、赤ちゃんまでが、残された太陽の陽射しを求めてレストラン屋外での食事・茶のみ話を三々五々楽しむ風景が本当に印象的でした。太陽の出ている日は午後の勤務時間が短縮されるとか(太陽を謳歌できる個人の時間を大切にする)。

「太陽の光」こそが最大の貴重品という感覚、これがすべての生活の基本となっているこの国の人々の生活のあり方に、驚きと感動を覚えたました。

また、自然享有権というのがあって、誰でも海や湖、山に入り自然を楽しむ権利を有しているというのです。例えば湖畔に家を建てても岸辺は誰でも自由に歩けるよう塀を作ってはいけないとか、水先150メートル内は他人の船は通過できるが船を止めて釣りをしてはならないとの掟があり、自然権と私権との調和を図っているとのことでした。

バリアーフリーも、道路の段差や低床バスは当然のこと、最近は自然を楽しむ権利にも及んでいるとの耳新しい話を聞きました。

これから木の実や茸の収穫シーズン。これが冬場のビタミンC・D等の補給源(韓国ではキムチが役割を担っている)となっている由。また、ノルエーではサラダを食べる習慣はここ30年前からで、中東や東欧からの出稼ぎや移民、難民受け入れで定着化したとの由。

住んでいる居住人口の絶対数が少ないこと、そして厳しい自然への畏敬とともに自然を楽しむ術を身につけ、質実剛健、シンプルな生活ぶり―。この国の自然環境や風土等の諸条件が、他者の人間尊重とか思いやり・やさしさを生みだしているのではないか、北欧の人権や福祉尊重思想の根源にあるのではないか、これが人々の安全観を支えているのではないか。そんな印象をもってスカンジナビアを後にしました。

 


 


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